2011年3月7日月曜日

犬たちをおくる日

この本の冒頭は次の文で始まる。

二〇〇九年二月十九日,午後一時二十分。

その日,わたし(著者)が殺したのは三十頭の成犬、七匹の子犬、十一匹のねこであった。

その死に顔は、人間をうらんでいるようには見えなかった。

彼らはきっと、最期のその瞬間まで飼い主が迎えに来ると信じて待っていたのだろう。


あの日からずっと、ステンレスの箱の中で死んでいった彼らを思わない日はなかった。

”だれかをきらいになるより、だれかを信じているほうが幸せだよ”

犬たちの声が聞こえる。

この「命」、どうして裏切ることができるのだろうか・・・・・・。

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年間で30万匹の犬や猫が殺処分されているという。

それも安楽死ではない。

二酸化炭素ガスによる窒息死だ。

この本には捨てられる命を一匹でも多く救いたいという

日本一の動物愛護センター目指して奮闘する愛媛県動物愛護

センターの職員が写真とともに実名で出てくる。

捨てられた犬や猫を殺処分機に送らなければならない日常や

一匹でも飼ってくれる人のところへ送れるようなしつけをする姿など

職員たちの奮闘の記録を追っていく。

身勝手な飼い主たちも登場する。

アホ犬だから捨てると言いながら、しつけのできたかわいい子犬を

譲ってくれという男の人。

思い直して犬を連れ戻しに来たのかと思ったら

記念写真を撮るためだけにセンターを訪れた親子。


ぼくが一番心に残ったのはある職員の次の言葉だった。

「犬が好きだから、あえて犬を飼わないという考え方もあるんです。」

「犬がどんなに好きでも、犬を幸せにできるという確信が持てなければ

欲しくても飼わないと決めるのも一つの動物愛護と私は思っています」


職員の努力の結果少しずつ殺処分の数は減っているという。

しかし日本全国を考えたとき、今も年間30万匹の犬や猫が殺処分されている事実は変わらない。

ぼくたち人間に突きつけられた重い責任だと思う。

一人でもたくさんの人が関心を持ってこの本を読んで欲しい。


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