2011年4月24日日曜日

社説:サマータイム 節電効果だけじゃない - 毎日jp

 浮上しては消え、を繰り返し、国を挙げての実現には至らなかった「サマータイム」制が、再び関心を呼んでいる。原発事故の影響で今夏心配される関東地区などの電力不足が背景だ。

 被災地の人たちが多くの困難と闘っている時に、わざわざ混乱要因を増やすべきではないとの意見もあろう。だが、震災を機に、日本全体がエネルギーの使い方を含め、くらしや社会のあり方を見直そうとしている今だからこそ、あえて踏み出す価値もあるのではないか。

 昼間が長くなる夏場に、時計の針を進めるのがサマータイムだ。例えば午前5時は6時になる。朝早く明るくなるので、その時間を有効活用し、主に照明用電力を節約するのが一般的な狙いである。

 加えてもう一つ重要な目的がある。ピーク電力の抑制だ。

 夏の暑い時期、電力の使用量は大抵、午後2~3時ごろに最大となる。気温が一日の中で最高となり、冷房需要がピークに達する時間である。同時に経済活動が最も活発になるのも昼休み後のこの時間帯だ。

 一方、一日で電力使用が最低になる午前5~6時ごろはピーク時の半分程度しか使っていない。供給力にゆとりがある早い時間帯に経済活動を開始し、ピークを暑さのピークとずらすことができれば、電力使用の一点集中が緩和できる。

 ただ1時間差のサマータイムだけでは十分でないかもしれない。職場の始業時間を早めることと組み合わせれば、より効果を実感できよう。この際思い切って最大時で2時間、時計の針を進めることも検討してみてはどうだろうか。

 電力会社は真夏のピーク時の需要に合わせて発電設備を増強してきた。今夏の電力の逼迫(ひっぱく)度は当初、懸念されたほどではなくなる可能性が出てきたが、夏場のピークの高さを低くできれば、この先、余計な設備を抱えなくてもいいことになる。

 サマータイムには、「残業で結局、長時間労働になるだけ」との反対論も根強かった。だが、今は業務時間短縮の機運が高まっている。早く始業しても取引先に合わせて結局、遅くまで働く、という事態を招かないためにも、一斉の導入が望ましい。

 ここで強調しておきたいのは、サマータイムの効果が電力の有効使用にとどまらない可能性だ。働き方やくらし方、家族との過ごし方などに本質的な変化をもたらし、私たちが経済発展の中で見過ごしがちだった心の豊かさを取り戻すきっかけになる潜在性を秘めている。

 仕事が終わってから4~5時間も明るい時間があったら--。まずは想像することから始めてみよう。


-- iPhoneから送信

0 件のコメント:

コメントを投稿