mixiニュースのコラムでの記事。
乙武さんの想い、思い。
転載。
東日本大震災の発生後、世間では娯楽や経済活動を控えるといった"自粛"ムードが蔓延し、普段通りの生活をしているだけで「不謹慎だ」と言われるような風潮が目立ち、論争の対象になっている。乙武洋匡が、自身のTwitterで、「飲みにいってもいいんじゃないか」というツイートを「不謹慎だ!」と批判したユーザーに対して「でた、不謹慎厨!」と返答するなど大胆な発言をしていることも、注目を集めたトピックのひとつだ。これまでも、自らの障害をネタにするなど、突飛とも思える発言を繰り返してきた乙武氏は、このような世の中の反応をどうとらえているのだろうか。
――今回の事態に、一部で過剰とも思えるほどに"不謹慎だ!"という声が上っている風潮について、どう思いましたか?
乙武洋匡(以下乙武) 震災後、テレビなどで流れる被災地の悲惨な光景を目にすることで、皆さんの中で「自分は平和な日常を送っていていいんだろうか?」という戸惑いや罪悪感が湧き、それが過剰な反応を生むきっかけになってしまったのだと思います。僕は、そんな"自粛ムード"が蔓延している中あえて開催を決行した、「キャラメルボックス」さんの演劇公演(「夏への扉」3月5日~27日)を見に行った時、すごく力をもらったんです。みんながピリピリしている中で締め付けられていた自分の心が、解放されたように感じました。
すごく印象的だったのは、その公演では、いつもは3~4回やっているカーテンコールを節電の影響で1回しかできなかった代わりに、役者さんたちが客席の通路を通って退場するというパフォーマンスがあったこと。できることの限られた中で、どんな工夫を加えたら見に来てくれた人に力を与えてあげられるのか考えた末の、素晴らしいアイデアだったと思います。
■批判を恐れた"自粛"は他人に強要された"他粛"
――一方で、"自粛ムード"の影響で予定していたイベントが中止や延期になり、倒産した会社もあったようです。
乙武 集客や停電の影響があっての中止なら分かるけど、例えばまったく関係のない西日本でも自粛するというところには疑問を感じますね。本当に被災者の方々、被災地のためを思っての"自粛"なのか、この時期に開催をして批判を浴びることを恐れた自分たちのための"自粛"なのか。後者であれば、それは"自粛"ではなく"他粛"ではないのか、と。それをTwitterに書いたところ、フォロワーさんが「それは"自粛"ではなくて"萎縮"ではないか」と言っていたんです。すごくうまいこと言うな~と思いましたね(笑)。
――震災後は震災前に比べて"不謹慎"のラインが変わったように感じるのですが......。
乙武 まったくそのラインは違ってきていると思いますね。僕の場合ツイートで「飲みに行ってもいいんじゃないか」と言ったことに対して"不謹慎"だと言われてしまった。でも、普通の生活で「飲みに行こう」ということに対して"不謹慎"だなんて、誰も言わないですよね?
――被災地の方からもTwitterで、「不謹慎だ!」と言われる事はあるんですか?
乙武 実はあまりないんです。むしろ逆に、「私たちが復興に向けて歩み始めた時には、それを支えられるように、活発に飲んで遊んで働いて経済を活性化させてください」と言ってくれる方もいます。"不謹慎だ"と過敏な反応をしてしまっているのは、むしろ被災地以外の方であることが多いんですよね。
――"不謹慎"発言で話題になっている有名人もいますが、気になったケースはありますか?
乙武 陸上の為末大選手が「今だからこそスポーツをするべきではないか」と発言をしたことに対し、賛否両論が巻き起こっているみたいだけど、スポーツ界にかかわらず、エンタテインメント業界についても、飲食・娯楽についても、積極的にやっていくべきだと感じています。それを不謹慎と思うのは自由だけど、相手にまで「不謹慎だからそれはやめるべきだ」と同じ行動を求めるのはおかしい。今、"不謹慎"かそうじゃないのかという議論をする時に、スタンスとして「相手に自分の思いを強要しない」ということが大事だと思っています。
――今回の"不謹慎"騒動とうまく付き合ってるな、と思う人はいますか?
乙武 僕は最近デーブ・スペクターさんのTwitterにハマっていますね(笑)。
【こんな時にささやかなギャグですが・・・ミネラルウォーターの緊急輸出を検討しているアメリカの州→水売り州】
くだらないんですけど、ちょっと面白くないですか?(笑)あえて、"不謹慎"スレスレのダジャレを持ってくることで、クスッと笑ってしまった人はいっぱいいると思うんですよね。そういったことで救われた人もいると思うんです。
――乙武さんはよく、Twitterで個人に対してリプライをしていますが、意識していることはありますか?
乙武 僕の発言には毎日、何百何千とリプライを頂くのですが、中でも多くの方に考えていただきたい内容に関しては、リツイート(※Twitterにおいて、ほかのユーザーのツイートを引用形式で発信すること)して広く意見を募るなどといったことはしています。
■「僕に対して"かたわ"とからかうくらいの人の方が接しやすい」
――東京都金町浄水場(葛飾区)の水道水から、乳児の飲み水についての国の基準の2倍を超える数値の放射性ヨウ素の検出したと発表をし、同浄水場から給水している東京23区と多摩地域の5市を対象に、乳児に水道水を与えるのを控えてほしいという報道があった際に、乙武さんがTwitterで「被曝する前から奇形だしな!とか言うと怒られるの?」と言われたことに「飲んだら、むしろ生えてくるかなo(^o^)o ワクワク」と返してらっしゃいました。どういうお気持ちであのような回答をしたんですか?
乙武 僕にとっては、そういうネタを振ってくれる人の方が接しやすいんです。逆に「そういうのはけしからん!」と思う人たちの方が接しづらい。2ちゃんねるでも、僕の手のことを"手羽先"という人がいて、面白いな~と思いました(笑)。本質は、言葉ではなく、その人が僕に対してどういう思いを抱いて発言をしているのかということだと思うんです。
例えば、僕に対して「かたわ!」と言う人がいたとすると、それは「不謹慎だ!」と言われたりするかもしれない。でも、僕のことを大事に思ってくれている友人が、「こいつ"かたわ"だからさ~(笑)」と言ってもそれは失礼ではないと思うし、僕も傷つかない。それが「乙武さんは、そんな体なのに頑張っていらっしゃって......」と、きれいな言葉で言っていても、実は障害者である僕のことを見下して言っていたとしたら、そっちの方が失礼だと思うんですよね。
だからといって、ほかの障害者の方に対しても同じようにからかっていいのかというと、それは、その人によって受け取り方が違うので、そのあたりはすごく慎重にならないといけないと思うし、障害者と接する場合だけではなく、普段の人間付き合いでも大事なことだと思うんですよね。
"不謹慎"も同じで、どんな言葉でも受け取る人次第だから、発信する方も聞く方も、常にそこは意識するべきだと思いますね。
――最後に、乙武さんの近況について教えてください。
乙武 4月1日に東京都練馬区で「まちの保育園」をオープン。役員として経営に携わっていきます。ここまでの話ともつながりますが、現場の先生方には、子どもたちのためだと思うことは積極的に取り組んでもらい、その意図に対して保護者から寄せられてくるであろうさまざまな意見もあるかとは思いますが、すぐに謝るとか、やめるのではなく「意図に対して理解を求める毅然とした対応を心掛けてください」とお話をしました。賛否両論あることを覚悟の上で、しっかりと自分の思いを伝え形にしていくことが大事だと思います。
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