2011年4月29日金曜日

福島の子を助けて

http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201104271202043 

 「とにかく子どもを守りたいんです」。電話口から聞こえる声は、覚悟のこもったものだった。声の主は、福島県内のある小学校で教員を務める川口真理さん(仮名・32歳)。立場上、名前を公表できないが…と前置きしたうえで、「福島の子どもたちが危険にさらされている状況を伝えたい」と、匿名でインタビューに応じてくれた。(和田秀子)

 その全文をご紹介する前に、まずは現在、福島県内の小中学校や幼稚園が置かれている状況を、もう一度整理しておきたい。

 文部科学省は19日、子どもの年間被曝量を20ミリシーベルト以内とし、校庭の放射線量が毎時3.8ミリシーベルト以上なら「屋外活動を1時間以内」にとどめ、未満なら「通常通りで問題ない」と公表した。
 しかし、年間被曝量20ミリシーベルトという数値は、原子力施設などで働く人々が、不要な被爆を避けるために法令で定められている「放射能管理区域」の基準(3ヶ月で1.3ミリシーベルト)をはるかに上回る値である。大人より放射性物質に敏感な子どもにとって、果たしてこの数値は「大丈夫」と言えるレベルなのだろうか――。すでに福島県内の学校の約75%が、この「放射能管理区域」レベルに達しているという。

 こうした状況をふまえて、川口さんのインタビューを読んでいただきたい。

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■できることなら、この地を離れてほしい

 私たち教員は、立場上、大きな声で「子どもを学校に通わせるな」とか「校庭を使わせるな」ということは言えません。なぜなら、国が「年間20ミリシーベルトまでなら子どもが被爆しても大丈夫」と公言してしまったからです。長崎大学や広島大学の教授までもが「外で遊んでも大丈夫」という声明を出していて、そういった資料が私たち教員にも配布されているので、それに基づいて動かなくてはならないのです。
 でも、校庭の植え込みやや水たまりなどでは、かなり高い数値の放射線量が計測されています。とても、「安全です」と言える状況ではないのです。本当は、「この地を離れて!」と子どもたちに言いたい。でも、公に言うことはできません。せめて新学期の再開を遅らせてくれれば……と願っていたのですが、それもかないませんでした。なんとかしたいけど、何もできない――。教員たちの多くは、罪悪感を抱えながら子どもたちと接しているのです。

■心配をタブー視する空気

 もちろん、父兄の方々も心配しています。子どもを持つ親ですから、この状況で心配しないわけはありませんよね。でも、「心配だ」と声に出すことが、どこかタブー視されているような空気があります。「政府が大丈夫だと言っているのだから、信じるしかない」そう思って、目をつぶっておられるのでしょう。
 避難できるならそれにこしたことはありませんが、どのご家庭も、とても避難できるような状況じゃないんです。先日、授業参観があって、父兄の方々と話をしたのですが、ローンを抱えている方もいれば、責任ある仕事に就いている方もいる。夫が理解を示さない方や、家族が離ればなれになるのがイヤだという方もいるんです。もちろん、ご近所の目もありますからね。

 そういった複雑な状況が絡み合っているので、子どもたちを疎開させたくても、我慢せざるえない状況の方が多い。私の学校で疎開した生徒は、全体のわずか1%程度にとどまっています。せめて政府が、子どもたちだけでも学童疎開させてくれればいいのですが……。

■子どもを地べたに座らせる学校も

 子どもたちへの被爆対応は、学校によって温度差があります。私の学校は、他校と比べて動きが速かった。すぐに文科省から放射線測定器を借り、各クラスで毎日測定をして、数値をHPでアップしています。また放射性物質から子どもを守るためのパンフレットを作成して、保護者たちに配ったりもしました。そのほか、なるべく子どもたちを校庭に出さないようにしたり、マスクの着用や手洗い、うがいの慣行を徹底させたりしています。
 しかし、他校の話を聞くと、始業式早々に避難訓練を行い、グランドの地べたに子どもを座らせたり、「国が大丈夫だと言っているんだから体育の授業もしなくてはならない」ということで、通常通り外で授業を行ったりしているところもあります。中学校では、すでにグラウンドで部活動を始めているところもあるようです。規模が大きい学校ほど、融通がきかず、国が「大丈夫」と決めたらそれに従うしかないという現状があります。

■何が子どものため?

 子どもたちも、大きな不安を抱えています。でも、それを「見せまい」としている。そこが辛いんです。私も、「こんなときだからこそクラスの結束を強めようね」と、子どもたちに話していますが、本当にそれで良いのだろうか…と悩みます。だって、絆が強くなればなるほど、子どもたちは「このクラスのみんなと一緒にいたい」と思ってしまう。この学校を離れられなくなるのです。いっそ、「こんな学校、面白くないから転校してやる!」と思ってくれた方がいいのかもしれない。安全な地域の学校へ移ったほうが、本当は彼らのためなのです。

■Twitterでつぶやいて!

 とにかく、子どもを守りたい。学校ごと避難できれば一番良いのですが、そんなことをすれば補償がかさみますから、政府は絶対に決断しないでしょう。自主避難できる人はしてほしいけれど、それもなかなか難しい。ですからせめて、体育や部活動の自粛をしたうえで、土壌の除染作業をまずやってほしい。政府はなかなか動こうとしないと思いますが、声を上げ続けなくてはなりません。こうしている間にも、子どもたちは被爆し続けているのです。

 この記事を見た人が、たとえひとりでも、福島の子どもたちのためにアクションを起こしてくれたら――。「福島の子どもたちを助けて!」とTwitterでつぶやいてくれるだけでもかまいません。それだけでも、世論を喚起し、政府を動かすキッカケになるのではないかと思っています。

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 不安をあおるつもりはない。政府や研究者が「大丈夫だ」と言っているのだから「問題ない」と思う人もいるだろう。しかし、たとえ数パーセントでも危険性があるなら、できうる限りの対策を講じる義務が政府にはある。そして、政府を動かすのは他でもない私たちひとりひとりの“声”であることは間違いない。


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