福島第1原発1号機の海水注入中断問題は、吉田昌郎所長が事態悪化を防ぐため、職を賭す覚悟で注水を続けさせていたことが判明した。これで無能ぶりが一層あらわになったのが、菅直人首相率いる官邸と東京電力幹部だろう。不確かな知識で大騒ぎして周囲を混乱させるリーダーと、それに対抗できないエリートたち。これは現代日本の縮図なのか。
「地震・津波対策を含めた最高水準の原子力安全を目指す。(事故情報を)最大限の透明性をもって全て提供する」
菅首相は26日、仏ドービル・サミット昼食会で、こう発言した。オバマ米大統領やサルコジ仏大統領など各国首脳はうなずいて聞いていたが、内心あきれ果てていたに違いない。
原発事故発生以来、菅政権が情報隠蔽を続け、世界各国が激怒していたことは常識。さらに、サミット直前、国会でも大論争となった海水注入中断問題で、実は注水が続けられていたことが明らかになったのだ。
官邸には「これで、菅首相が海水注入中断を指示して事態を悪化させたという疑惑が払拭された」(関係者)と受け止める向きもあるが、事態はそれほど甘くない。
政府は震災当日、原子力対策特別措置法に基づき「原子力緊急事態宣言」を発令している。菅首相に、原子力事業者に指示・命令できる強い権限を与える宣言であり、当然、すべての情報を把握する責任を伴うが、それができていなかった。
そもそも、震災翌日の3月12日夕、菅首相が「海水注入で再臨界となるのではないのか。詰めろ!」と科学的根拠に乏しい情報で大騒ぎし、これを原子力安全委員会の班目春樹委員長も「可能性はゼロではない」と追認していたことは事実なのである。
東電側の責任も重い。
東京の東電本店に設置された事故対策統合本部と、第1原発の免震重要棟にある会議室は24時間、テレビ会議ができるが、東電幹部らは吉田所長の悲壮な命令違反を知らなかったことになる。
「事態悪化を防ぐため」とはいえ、注水続行を隠していたのは問題。東電は2002年に原子炉内の構造物のひび割れなどを隠し、06年には原発のデータ改ざんも判明しており、同社の信頼を傷つける。
さらに言えば、官邸には元副社長の武黒一郎フェローが常駐していたが、原発を運営する電気事業者として、菅首相の不確かな知識による暴走に苦言を呈することはできなかったのか。
6月1日の党首討論後に、内閣不信任案提出を視野に入れている自民党の谷垣禎一総裁は26日の会見で「事実説明の迷走に開いた口がふさがらない。世界で情報隠蔽への疑惑が広がる」と政府を激しく非難した。
もう、いい加減にしてもらいたい。
菅首相、ほんとに様にならない。
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