2011年4月10日日曜日

悲しみの中にいる、あなたへの処方箋

自らも愛妻をがんで亡くした医師・垣添忠生氏の『悲しみの中にいる、あなたへの処方箋(せん)』は、愛する人を失って悲嘆に暮れる人たちの心に、やさしくそして具体的に寄り添おうとする本である。「本なんかで勉強してもこの悲しみは消えない」と思う人もいるかもしれないが、「“そんなはずはない”という否認」「“誰もわかってくれない”という疎外感」など、親しい人と死別した場合に誰にでも起きうる反応が具体例をあげながら示されると、「私だけじゃなかったんだ」とそれだけでも気持ちが落ち着くのではないだろうか。

 では、どうすればそこから立ち直れるのか。本書の中で、著者は繰り返し、「『悲しむこと』に一心に打ち込むこと」、「我慢や遠慮をせず、おおいに涙を流すこと」の効用を説く。それをするには、時間や場所なども必要になるだろう。悲しみに暮れる人を「一刻も早く立ち直って」とせかすことを、私たちは慎まなければならないのである。

大震災と喪失感 香山リカさんが選ぶ本より

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