2011年4月10日日曜日

もこもこもこ

『もこもこもこ』は、私が昨年、父親を亡くしてまもなく、柳田邦男氏と対談したときに教えてもらった擬音だけの絵本だ。大地に何かが芽吹いて「もこもこ」「にょきにょき」と育っていき、「ぱちん!」とはじけて、その後に広がるのは「しーん」という静寂。しかし、裏表紙の内側「見返し」と呼ばれる部分に、小さく「もこ」と次の芽吹きが……。それ以上、何の説明もないのだが、悲しみによる混乱が続いていた私の心の中で、すとんと何かが腑(ふ)に落ちた。

 悲しみを悲しみのまま、抱きしめる。時間をかけてその感情と向き合い、自分なりの、自分だけの意味を見つける。そこから始めるしかないが、それは必ず始められるはずなのだ。

大震災と喪失感 香山リカさんが選ぶ本より


0 件のコメント:

コメントを投稿